心房細動アブレーションの新しいガイドラインが2019年3月に発表になりました。下に示します。クラスⅠ、Ⅱaとはアブレーションを行った方が良い人、Ⅱbはアブレーションをすべきかどうか、まだ不明な人、Ⅲはやらない方が良い人です。
今回の改訂のポイントを解説します。旧ガイドラインでのアブレーションの適応は「薬剤抵抗性症候性心房細動患者(薬を投与しても、症状が続く心房細動患者)」でした。つまりは、「心房細動患者にはまずは薬を試せ、それでもだめならアブレーション」ということです。しかし、新ガイドラインでは薬剤抵抗性という文言が、クラスⅡaからはずされ、「症状を有する心房細動患者であれば、薬を試さずに、いきなりアブレーションを実施しても構わない」ということになったのです。この新しい基準は、3つの大規模試験の結果によりもたらされました。それは、心房細動患者を薬物もしくはカテーテルアブレーションのどちらからに分けて治療すると、カテーテルアブレーションの方が、心房細動が良く治り、医療費も薬物を内服し続けるよりも、安くあがるというものでした。アブレーション治療に携わる我々不整脈専門医が肌で感じていたことが研究で明らかとなり、ガイドラインにも反映されるようになったのです。
しかし、新ガイドラインでも、まだ不明なのは、クラスⅡbの患者さんです。つまり、「症状のない、心房細動患者にアブレーションを行うべきかどうか?」現在、当院ではたとえ症状が無いもしくは軽微な人でも持続性、慢性心房細動であれば、アブレーションを勧めています。理由は、心房細動が続いて良いことは一つもなく、正常の心拍に戻ることで、心不全、脳梗塞発症のリスクを減らせるからです。また、そのために行われるカテーテルアブレーションが短時間で終了し、治療成功率は高く、安全性も極めて高くなったのも大きな理由です。術前に症状は全くないと言われていても「アブレーションの後は、日常の労作が極めて楽になった。以前は階段を登って息切れがするのは当たり前だと思っていたけれど、正常の心拍に戻って、あのとき実は息苦しかったんだと始めて気づきました。」と言われる方がなんと多いことか。症状があっても、それが長く続いたために、分からなくなっているのです。
症状がたとえ無いもしくは軽微な人でも、心房細動であればアブレーションの適応はあると思います。研究の積み重ねにより、現在のガイドラインでクラスⅡbの人が、将来はⅡaになるだろうと確診しています。
クラス
Ⅰ | 高度の左房拡大や左室機能低下を認めず、薬物治療抵抗性の症候性発作性心房細動 |
Ⅱa | 症候性再発性発作性心房細動 に対する第一選択治療としての カテーテルアブレーション 心不全(左室機能低下)の有無にかかわらず,同じ適 応レベルを適用する 徐脈頻脈症候群をともなう発作性心房細動 症候性持続性心房細動 |
Ⅱb | 症候性長期持続性心房細動 無症候性発作性心房細動で再発性のもの 無症候性持続性心房細動 |
Ⅲ | 左房内血栓が疑われる場合 抗凝固療法が禁忌の場合 |