2020年1月に新しいアブレーションシステム(カルトファインダー)が当院に導入されました。アブレーション専門施設ということで、全国に先駆けて試験的に導入されたものです。心房細動アブレーションとは、簡単にいうと「心房細動を起こす場所(心房細動起源)を探して焼いて治療する」ことです。心房細動が発症する瞬間にその出現場所をカテーテルを使って見つけなければなりません。そのために心房細動が発症する瞬間が少なくとも数回、多いときには10回以上必要です。ところが、心房細動は簡単には起こってくれず、誘発剤と時には電気刺激が必要で、発症するまでの時間は1回当たり3~5分のこともあれば、10分以上かかることもあります。つまり心房細動起源を見つけるためには、術者の技術力はもちろんのこと、忍耐力も必要なのです。
しかし、このカルトファインダーはなんと、心房細動が起きる瞬間ではなく、心房細動が持続している最中に心房細動起源を探すことができるのです。探索原理は極めて単純で今までも同じことは行ってきていましたが、心房細動中に人間の目で解析するのは動体視力がついていかず至難の業でした。しかし、高速のコンピューターを用いてその複雑な波形を解析して、心房細動起源を見つけることができるようになりました。
先日、早速、肺静脈以外に心房細動起源が存在する難治性発作性心房細動患者さんに、このカルトファインダーを使用しました。心房細動を起こしたあとに、心房細動起源が疑われる場所にカテーテルを持って行き、30秒間記録するとコンピューターがある一点を指し示してくれます。正直なところ最初は疑心暗鬼でしたが、そこを焼灼すると、それまで全く停止しなかった心房細動が数回の焼灼後にピタッと停止したのです。とても驚きました。驚愕です。本当に凄いことです。
心房細動が発症する特徴を人間の力で読み解き、それをコンピューターに覚えさせ場所を同定するという、極めて頭の良いやり方にとても感心しています。イスラエルの頭脳集団はすばらしいことをやってのけます。