全身麻酔とは静脈麻酔で完全に患者さんを寝た状態にして、筋弛緩薬で体を動かないようにするものです。その間は呼吸も止まってしまうので、人工呼吸器で肺に酸素を送ります。アブレーションは、不整脈の原因となる心臓の筋肉に高周波の電流を流し、心筋を焼灼壊死させるものです。電気を流す心筋の内側の膜には、痛みを感じる痛点は存在しませんが、心筋の外側の膜には痛点が存在します。通電により心筋は深さが5mm程度焼灼されるので、熱が心臓の外側の膜に達して、激しい痛みを感じます。アブレーションの際に全身麻酔を実施するメリットは主に2つあります。1)患者さんは痛みを感じず楽にアブレーション治療を受けることができる、2)呼吸を人工呼吸器で調整するので、心臓の呼吸による上下動を少なくすることができるです。使い方によってはさらにメリットもあります。正常の電気の通り道である房室結節の数ミリ離れたところを焼灼する際や、心臓の天井(左心房の頭側の壁、この部分にカテーテルを当てている時に、心臓が大きく上下動するとカテーテルの先端が壁に突き刺さるように強く当たってしまいます)を焼灼する際に、人工呼吸器を短時間止めるもしくは呼吸量を最小にするのです。その間心臓はほとんど上下に動くことなく、カテーテルの先端を目的とする場所に、一定時間、ズレることなく当てておくことができます。人工呼吸器を止めると言っても僅か、1〜2分間程度です。それ位なら、ほとんどの人は息を止めていられるでしょう。命の危険はありません。安全性と効果を考慮すると、アブレーション治療は全身麻酔で行うことが絶対に正しいと信じています。
院長:桑原 大志
※毎週:「木曜」と「金曜」と「土曜午前」で外来診療