同じ心房細動を有する人でも、脳梗塞になりやすい人とそうでない人がいます。それぞれの患者さんの脳梗塞を引き起こす可能性は、心房細動以外に、脳梗塞を合併しやすい病気や背景をいくつ持ち合わせているかよって変わってきます。それらの病気や背景とは、うっ血性心不全、高血圧、年齢(75歳以上)、糖尿病、過去に脳梗塞を発症しているかどうかということです。
これらの因子にそれぞれ点数をつけ、患者さん毎に合計点数を計算し、その患者さんの脳梗塞になりやすさの指標にしています。うっ血性心不全は1点、高血圧は1点、75歳以上 は1点、糖尿病は1点、脳梗塞の既往が2点です。この合計点数は、それぞれの英語の頭文字をとってCHADS2(チャッズ)スコアと呼んでいます。例えば、76歳の、糖尿病を持っている心房細動の人は、75歳以上(1点)と糖尿病(1点)が該当しますので、CHADS2スコアは2点になります。
このスコアは実に有用です。次のグラフは、このスコア別(0~6点)に、1年間に脳梗塞を発症する頻度を表したものです。スコアの点数が上がるごとに脳梗塞合併の割合が高くなっています。CHADS2スコアが6の人は、1年間に100中、18人の人が脳梗塞を発症するということです。
我々医師は、心房細動患者さんに、抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)を投与するかしないかを決めるときに、このCHADS2スコアを計算して考えています。このスコアが2点以上になれば、脳梗塞予防のために、抗凝固薬を内服したほうが良いと言われています。ただし、NOACのプラザキサとエリキュースを使用するならば、これらの薬は出血性合併症が少ないので、CHADS2スコアが1点でも投与した方が良いとされています。
CHADS2スコア別の年間脳梗塞発症率 (縦軸が年間脳梗塞発症率、横軸はスコア)
出典 JAMA 2001;285:2864–70.