「あの検査を手術前にやるなら、カテーテルアブレーションは受けたくない」と多くの患者さんが訴える検査があります。それは、経食道エコー検査です。
心房細動患者さんには、左心房の左心耳というところに、血栓がついていることがあります。そのような状態で、カテーテルアブレーションを実施すると、カテーテルでその血栓を飛ばしてしまい、手術中に脳梗塞を合併する可能性が高い。故に、予めそこに血栓があるかないか確認しておく必要があります。
経食道エコー検査|人差し指の太さの管を飲み込む苦痛
経食道エコー左心耳というのは、心臓との間に何の障害物もない食道から観察すると、極めて美しく描出できます。
しかし、その経食道エコーは、エコーの先端にカメラがついていないために、食道に挿入する際に、患者さんの「嚥下運動」の協力が必要です。つまり、人差し指の太さほどの管を飲み込んでもらわなければならないのです。これが苦痛なのです。数パーセントの患者さんはどうしても飲み込めなくて、検査がキャンセルになることもあります。
経食道エコー検査をしなくて済む?「造影CT」の可能性
そこで「奥の手」があるのです。それは“胸部造影CT”です。
造影剤を注射した後に、タイミングを見計らって胸部のCTを撮影します。造影剤がしっかりと左心耳に流入していれば、血栓はないと診断できます。反対に、左心耳に造影剤が流入せずに、欠損像があれば、血栓がついているか、もしくは左心耳への血液流入速度が遅いことが考えられます。
経食道エコー検査は、そのような患者さんに限定して実施すれば良いのです。実際に、そのような所見が得られるのは、全体の約1割です。その1割の4人に1人は、経食道エコー検査で血栓が見つかります。
造影CTの画像はカテーテルアブレーションにも利用可
造影CTを実施しなけらばならないので、コスト、造影剤アレルギー、放射線被ばくの問題が生じます。
しかし、そのぶん経食道エコー検査の件数が全体として減少し、患者さんの嚥下の負担はなくなり、また造影CTで得られた画像はそのままカテーテルアブレーションに利用できるというメリットが生まれます。それらすべてを考慮すると、有望な検査の一つと思われます。
黄色矢印で示した部位が左心耳です。この患者さんは造影剤が十分左心耳の中に流入しています。欠損像はなし、つまり、血栓はないと診断しても構いません。(画像は当院データ)
参考文献
MartinezMW et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2009;2:69–76.
参考記事
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- 心房細動アブレーション後、薬の服用をやめるタイミング
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