心房細動の患者さんが内服しているお薬は、主に2種類あります。
- 血液サラサラの薬(抗凝固薬)
- 不整脈のための薬(抗不整脈薬)
心房細動アブレーション後に不整脈が治れば、これらの薬は基本的には中止可能です。
ただし、発作性心房細動の場合、慢性心房細動の場合で、薬を中止にするべきタイミングは異なります。
また、アブレーション後に心房細動が治まったとしても、脳梗塞の既往がある場合は、血液サラサラの薬(抗凝固薬)は中止しないほうが安全です。
薬の服用をやめるタイミング
発作性心房細動の場合
発作性心房細動の場合は、アブレーション後から抗不整脈薬は中止します。抗不整脈薬を内服したままだと、アブレーションの効果が不明だからです。術3ヶ月後に心房細動が治まっていれば抗凝固薬も中止します。
慢性心房細動の場合
慢性心房細動の場合は、術後3ヶ月は抗不整脈薬、抗凝固薬の両者を継続します。慢性心房細動は発作性心房細動よりも再発率が高く、アブレーション後に薬の助けを借りてでも不整脈を抑えたいからです。心房細動が治まっていると、心房はほとんどの人で小さくなり、心房細動が再発しにくくなります。
3ヶ月間、心房細動が治まっていれば抗不整脈薬を中止し、そのまた3ヶ月後(つまり術半年後)に正常の脈拍が維持できていれば、抗凝固薬も中止します。
脳梗塞の既往がある場合は注意が必要
脳梗塞の既往のある方は抗凝固薬を中止しない方が安全です。そのような方で抗凝固薬を中止してしまうと、中止しない人に比べ、中止後に約14倍も脳梗塞を発症する可能性が高くなると報告されています。また、心臓内に血栓ができた既往があったり、左心房が巨大であったりした場合も、抗凝固薬を継続した方が安全だと思われます。
「手術前から処方されている薬は続けるべき?」
「他院でアブレーションをしました。現在、正常の脈拍だけれども、手術前から処方されている抗不整脈薬と抗凝固薬が続いています。内服しなければならないのでしょうか?」
と質問をされることが良くあります。薬が続いている理由は次のふたつの場合があります。
- アブレーションを実施した医師が心房細動の再発を心配して、薬を処方し続けている場合
- 紹介元の医師とアブレーション施行医が異なり、両者の連携がとれておらず、紹介医がそのまま薬を出し続けている場合
血液サラサラの薬(抗凝固薬)が引き起こすリスク
抗凝固薬は1年間で100人に1人は脳出血や消化管出血などの重大出血性合併症を引き起こします。
当院も開院から3年間で、抗凝固薬を内服した400人の患者さんの内4人の患者さんで、脳出血もしくは消化管出血が発症しています。その4人はいずれも抗凝固薬の内服理由があった人ばかりですが、正当な内服理由がないにもかかわらず、漫然と薬を内服し続け、その薬の副作用を起こしてしまう悲劇は避けなければなりません。
アブレーション後に薬が続いたままで、内服理由が不明の方は、担当医にその理由をしっかり聞いてみてください。
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不整脈で気になることがあればどうぞお気軽にご相談ください
当院は、不整脈の治療に特化したクリニックです。軽症、重症にかかわらず、すべての不整脈が診療対象です。
当院で手術をした患者さんは、術後も24時間体制365日、診療できるような体制をとっています。
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