先月に続き新しく導入されたカルトシステムのご紹介です。コヒレントマップと言います。心臓の各所での電気の流れる方向と速さを極めて細かく表してくれるものです。今までのシステムとは比較にならないくらいほど、その精度が向上しています。電気の進む方向を矢印の向きで、スピードを矢印の太さと長さで表わしてくれます。
電気の流れの観察精度が上がると、治療の精度も上昇します。
先日、このコヒレントマップを複雑難治性心房粗動(心房頻拍)の患者さんに使用しました。大動脈弁閉鎖不全症の術後で、心房に障害が進み、心房細動、心房粗動があり、すでに4回アブレーションが施行されています。それでも心房粗動が根治しないために、アブレーションを当院で行いました。心房粗動の電気の流れは、左心房から心房中隔を介し右心房に伝わり、そこを上行し、左心房に戻ったあと、一旦左心房の外側に出てマーシャル靭帯という心臓に付着する心外筋肉組織を介して、また左心房に戻ってきます。専門用語で両心房頻拍と呼ばれるものです。以前ならば左心房と右心房の連結部位を広範囲に焼灼し、治療を試みていました。しかしながら、その方法は焼灼範囲が広範囲に及び治療成功率も低く、上手くいったとしても、右心房と左心房の電気的なつながりが悪くなるので、正常の調律に服した後も、電気的伝導障害が残ってしまいます。
この患者さんでは、そのマーシャル靭帯の左心房に付着する部位が、コヒレントマップで明らかとなり、同部位の1回の焼灼で心房粗動は停止しました。これは驚くべきことで、画期的な出来事なのです。今までのシステムでは、電気の流れの解像度が悪く、そこを焼灼するという発想が浮かんできませんでした。