以前お話したペンタレイというカテーテルを使用すると、極めて詳細な心臓の解剖情報が得られます。
ペンタレイの先端は極めて柔らかい。これを心臓の内面に這わしながら、電極の位置情報を1秒間に60回の高頻度で採取すると、心臓内面の3次元画像が作成されます。心臓を開けて、内面を直接観察しているようなイメージです。
房室結節という正常刺激伝導路の近くを焼灼する際には、房室ブロックという合併症が起きる可能性があります。以前ならば、アブレーションカテーテルと房室結節の相対的位置が不明瞭なので、同部位を焼灼する時は、合併症を予防するために、低出力で通電していました。しかし、そのために焼灼部位が生焼けとなり、浮腫んでしまい、その後追加で焼灼を加えても、深部を焼灼できず、上手く治療できないことがあったのです。
この画像情報を見ながらアブレーションすると、房室結節とアブレーションカテーテルの位置関係がはっきりと分かるので、たとえ距離が近くても安全な部位であれば、最初から遠慮せず高出力で焼灼できるので、治療成功率が高まります。
左が従来のレントゲン像で、左下のアブレーションカテーテルの先端が不整脈起源がある部位、その近くに房室結節があります。しかし、房室結節の場所はレントゲンにはうつらないので、両者の位置関係は不明瞭です。右が、左のレントゲン像に対応する3次元画像です。黄色のポイントが房室結節、赤のポイントが不整脈起源です。その間は約1cm離れています。画像情報の差は歴然としています。