以前、名刀正宗のお話をしました。カテーテル先端から生理食塩水を噴射しながら、高周波通電するイリゲーションカテーテルで、その噴射孔が56個あるものです。切れ味が抜群で、尚且つ、しっかりと考えて使えば、安全性も高く、とても気に入っています。
しかし、その後、米国で開催される世界で最も権威のある不整脈学会で、「このアブレーションカテーテルは合併症を多く引き起こす」と報告され、その場で、発表を聞いていた私は全く同意できませんでした。
私と同じように考えている医師はいるもので、最近、このアブレーションカテーテルの有効性と安全性を証明する論文が2つ発表されました。一つの論文では、106人の患者さんを、6穴(従来型)もしくは56穴(名刀正宗)のアブレーションカテーテルを使用する群に均等に分けて、心房細動治療をしたところ、56穴のカテーテルを使用した患者さんの方が、急性期の肺静脈隔離維持率が有意に高い(90.5% VS 95.2%)と報告されました(1)。もう一つの論文では、160人の患者さんを、やはり同じように、2つのカテーテル治療群に均等に分けたところ、56穴のカテーテル群の方で、肺静脈隔離に要する時間が有意に短い(35.4分 VS 39.9分)と報告されました(2)。また、2つの論文ともに、どちらのカテーテルを使用しても合併症率は変わらないというものでした。
簡単に言うと、このカテーテルを使用すると、より早く、より確実に肺静脈隔離をすることができるということです。施行する医師により好みは別れるかもしれませんが、今考えられる中で最高の刀だと思います。
この写真をクリックするとイリゲーションカテーテルが生理食塩水を噴射している動画に移動します。 |
参考文献 (1)Bertaglia E J Cardiovasc Electrophysiol. 2013;24:269–273. (2)Park C-I, . J Cardiovasc Electrophysiol. 2013;24:1328–1335.