本日はアブレーションの話ではありあません。心房細動、もっぱら持続性心房細動の薬物治療についてご説明します。以前は、持続性心房細動になってしまったならば、電気ショックや抗不整脈薬を使って、何とか元の正常の脈拍に戻すことが最良と信じられていました。
そこで、2000年前後に、本当に正常の脈拍に戻す治療が、患者さんにとって有益、つまりは死亡率を下げることにつながるのかどうかという研究が行われたのです。循環器医師の間ではとても有名な「AFFIRM(アファーム)試験」です。合計で4060人の患者さんを、心房細動のまま、安静時の心拍数を80拍/分以下に維持する「心拍数調節治療群」2027人と、抗不整脈薬や電気ショックで正常の脈拍に戻そうとする「リズムコントロール治療群」2033人に分けて5年間経過観察しました。経過中、心拍数調節治療群で310人の方が、リズムコントロール治療群で356人の方が亡くなり、死亡率には両群間で統計学的な差はなかったのです。それどころか、どちらかというと、一生懸命、正常の脈拍に戻そうとしたリズムコントロール群の方で死亡率が高い傾向にありました(1)。以前、信じられていたこととは逆の結果だったのです。
それからというもの、正しい結果が、以前信じられていたものと逆だったという反動も手伝い、持続性心房細動は、無理して正常の脈拍にもどさずに、心拍数調節治療で構わないのだという考えが急速に広がったのです。しかし、患者さんがいくら動悸症状を医師に訴えても、「心拍数調節治療をおこなっていれば、心房細動のままでも死亡率は悪くならないから、大丈夫です。」と言われ、心房細動のまま放置されることが日常臨床で頻繁に起こり、患者さんの生活の質(QOL)がないがしろにされることが起こり始めたのです。
この研究は、持続性心房細動の治療において、薬と薬の競争であって。薬とアブレーション治療の競争ではないのです。この結果をもってして、持続性心房細動は心拍数調節治療を行っていれば、放おっていおいても大丈夫ということにはならないのです。この続きは後日お話します。
Rhythm control(リズムコントロール治療群)とRate control (心拍数調節治療群)とでは5年間の経過観察で死亡率に統計学的な差はありません。参考文献 (1)より。 |