カテーテルアブレーションを実施すると良いことばかりが起こる訳ではありません。体の中に異物を挿入して、心筋を焼灼するので、患者さんにとって不都合なことも起こりうるのです。それが合併症です。
心房細動アブレーションする際に避けて通れない合併症の一つに食道障害があります。多くの患者さんで、食道は心臓の真後ろを通っているために、肺静脈隔離術を施行する際に、どうしても食道上の心房筋を数箇所焼灼せざるを得ないのです。高周波で発生した熱は、心臓だけにとどまってくれる訳ではありません。周りの臓器の食道にも伝わります。その際に食道は、食道粘膜上での測定で40℃以上の高熱に一過性にさらされるので、食道に火傷ができてしまうのです。
下図が当院でアブレーション実施た患者さんに発生した、食道内視鏡で確認された食道障害の様子です。10~20%の程度で軽度の食道炎が発症してしまいます。
食道障害を起こさないようにするために、食道温度をモニターしながらアブレーションを実施し、食道温度が上昇したならば、高周波の通電を止めています。また食道の近くでアブレーションを実施する際には、高周波の出力も下げています。そうすることで、食道障害の発生を低くすることができますが、どのように工夫しても10~20%程度は軽度の食道炎が発症してしまうのです(1)。アブレーション術後は、食道炎治療薬としてプロトンポンプインヒビターを内服して頂き、1ヶ月程度は、食道粘膜を刺激するようなアルコールや熱いものの飲食を控えて頂いています。軽度の食道炎は、数週間後には治癒しています。下図の患者さんすべてで、2~3週間後に実施した内視鏡検査で食道炎は消えていました。
軽度の食道炎の状態です |
参考文献 (1) Kuwahara, T et al. Europace, in press