カテーテルアブレーションとは、カテーテル先端を心筋に接触させて、高周波の電流を流し、心筋を焼灼して、不整脈を治療することです。焼灼中にカテーテル先端が、60℃以上になると、周りに流れている血液が、カテーテル先端に凝固付着します。その血液の塊が、剥がれて、血流によって運ばれ、脳血管を閉塞すると、脳梗塞を合併してしまいます。
そのため、アブレーションカテーテルには、安全機構が付いており、カテーテル先端が50~55℃になると、自動的に出力が制限され、先端温度がそれ以上にならないようになっています。しかし、焼灼中にその温度に到達し、出力が制限され、心筋が十分に焼灼できないことがしばしばありました。
そこで、イリゲーションカテーテルといって、カテーテル先端の6個の小さい孔から少量の生理食塩水を噴射し、カテーテル先端を冷却しながら通電するものが開発されたのです。しかし、それでも、カテーテル先端の温度が上昇し、十分に出力がでなかったり、また、アブレーション中に総計で1リットル近くの生理食塩水が体に入るため、心機能の低下した患者さんでは、心不全を合併したりしていました。
今年になり、先端の孔がなんと56個もあるものが開発されました。そのため、より少量の生理食塩水でもカテーテル先端が、十分に冷却され、使用する生理食塩水の合計も約半分で済むようになりました。心筋内のすべての領域で、こちらが思う通りの、出力を安全に出せるようになったのです。私自身アブレーション治療を始めて、17年になりますが、やっと名刀「正宗」を手に入れた気分です。
アブレーションカテーテル先端に56個の小さい孔があいています。今日の段階でまだ正式に発売はされていませんが、当院では先行して、使用させていただいています。すばらしいカテーテルです。 |