技術革命というほど大げさなものではないかもしれませんが、私が医者になった頃、20年以上も前のことになりますが、心臓超音波装置はとても大掛かりなものでした。機械本体は八畳間の半分も占める様な大きさで、そこから伸びるブルブルと振動するエコープローベを患者さんの胸壁に押し当てて心臓の中を観察していました。このエコープローベがとても貴重なもので、それだけで何と数百万円もし、尚且つ少しの衝撃でも故障するものですから、大切に大切に取り扱いました。落としたりでもしたら、先輩から大目玉を食らったものです。
時は移り、昨年11月から日本でも最新鋭のカルトサウンドという心腔内エコーが使用可能になりました。小型化したエコープローベを心臓の中に直接入れて観察するものです。勿論エコープローベは震えることはなく、そして、な・な・なんと使い捨てです。
胎児の時は右心房と左心房の間には小さい孔が開いていますが、成人になるとここに数mmの膜がはり、両心房間の連絡はとだえてしまいます。心房細動アブレーションの際には、ここに小さな穴を開け、左心房との連絡を確保しなければなりません。以前は、針先から造影剤を流しながら、膜の位置を”想像”し、最後には”エイや”という感じで針を刺して穴を開けていました。間違った場所を刺してしまうと、極めて稀ですが、心臓から血液が外に漏れてしまう心タンポナーデという合併症を発症してしまうこともありました。
心腔内エコーを使用するとこの薄い膜が一目瞭然です。針先が適切な部位を捉えているか確認してから、刺せるようになりました。術者も精神的にとても楽です。時代と共に医療技術は確実に進歩しています。