「健康家族に「いびきがひどい」、「寝ているとき、苦しそう」と指摘されたことはありませんか? 「日中、ひどい眠気に襲われて耐えられない」という人もいるかもしれません。心当たりがある人は睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、ひどい場合は心房細動など重篤な病気につながることがあります。一体、睡眠時無呼吸症候群とはなんでしょう? 不整脈専門医がわかりやすく解説します。
目次
「激しいいびき」や「昼間の眠気」は見逃さないで
激しいいびきをかくことや昼間の眠気は、決して珍しい症状ではありません。
しかし、いびきや眠気が「ある病気」によって引き起こされていることもあり、その場合には命のリスクにつながることもあります。「ある病気」とは、「睡眠時無呼吸症候群」のこと。
最近、ニュースやメディアなどでも話題になることがあるため、聞き覚えがある人も多いかもしれません。
「睡眠時無呼吸症候群」とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、簡単にいえば、大きないびきとともに、睡眠中に繰り返し呼吸が止まってしまう病気のことです。
「ゴゴゴ」と大きないびきをかいたと思ったら突然静かになり、再び「ゴゴゴ」といびきをかきはじめる。突然静かになったときには呼吸が止まっており、口の前に手を当てても息を感じない–。このように、激しいいびきと無呼吸の状態を何度も繰り返すことが、睡眠時無呼吸症候群の特徴です。
医学的な定義(*1)では、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態を「睡眠時無呼吸症候群」といいます。
死傷者を多く出したあの事故も、睡眠時無呼吸症候群が原因
睡眠時無呼吸症候群が広く社会に知られるようになったのは、2003年2月に起きたJR山陽新幹線の居眠り運転事故 です。
東京行きの新幹線が岡山駅に到着した際、所定の位置より約100m手前で止まり、3両がホームからはみ出したままになりました。車掌が運転席に駆けつけると、運転士は腰かけたまま眠っていたといいます。
運転士は体重が100Kgを超えており、検査の結果、睡眠時無呼吸症候群であることがわかりました。
それ以来、睡眠時無呼吸症候群の名前は広く知られるようになり、多くの企業が自社の運転士に検査を行うようになりました。
しかしその後も事故は続き、2012年4月には大きな惨事が起きました。運転士の居眠りにより、関越自動車道で走行中のバスが防音壁に衝突し、乗客45人が死傷したのです。
アメリカでの調査結果によると、睡眠時無呼吸症候群の患者が交通事故を起こす確率は、健康な人の約7倍にものぼるそうです 。(*2)また、睡眠時無呼吸症候群が重症になるほど、交通事故を起こす危険性も高くなります。
「太っている人」「首が短い人」「アゴが小さい人」などがなりやすい
睡眠時無呼吸症候群にかかりやすい人は、一般的に、次のような特徴があるといわれています。
- 太っている人
- 首が短い人
- 扁桃が大きい人
- アゴが小さい人
- アレルギー性鼻炎の人
- 高齢者
しかし、必ずしもこればかりでなく、近年では若くて痩せた人たちの間にも睡眠時無呼吸症候群が多く見られます。
国別にみると、東洋人は欧米人と比較して顎の骨格が狭いため睡眠時無呼吸症候群になりやすく、また、女性に比べて男性の方が発症しやすいこともわかっています。
朝起きても体がだるい。熟睡した感じがしない。そんな症状はありませんか?
睡眠時無呼吸症候群になると、当然のことながら睡眠が浅くなるため、日中にひどい眠気に襲われたり、体がだるくなったりします。そのほか、次のような症状があらわれます。
- 睡眠中、呼吸が止まる
- 寝ている間、頻繁に目が覚める
- 大きないびきをかく
- 睡眠中にあえぐ
- 熟睡感がない
- 朝起きると頭痛がする
- 日中、強い眠気を感じる
- 集中力が低下する
睡眠時無呼吸症候群を放置すると「命」のリスクになることも!
恐ろしいのは、睡眠時無呼吸症候群は「睡眠」に関わる問題だけではないということです。
近年の研究により、睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こしたり、狭心症や心筋梗塞などの心臓病や脳卒中を招いたり、不整脈を起こして寿命を縮めたりすることがわかっています。
それぞれ健康な人に比べて発症するリスクは高く、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性は3~4倍、重症の場合は心血管系疾患発症の危険性が約5倍高まる といわれています。(*3)
本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。続きはコチラ>>
出典
(*1) 一般社団法人日本呼吸器学会HPより
(*2) SAS対応マニュアル「睡眠時無呼吸症候群に注意しましょう!」国土交通省自動車交通
(*3) 一般社団法人日本呼吸器学会HPより
(*4) 第59回日本心臓病学会学術集会シンポジウムより
(*5) 一般社団法人日本職業・災害医学会会誌第66巻第1号より
執筆者
東京ハートリズムクリニック 院長
桑原 大志
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