不整脈のなかには、命を脅かすリスクの高いものがあり、命を守るためには、いち早く不整脈が起きていることに気づく必要があります。不整脈を診断するのに有効なのが心電図ですが、実は、心電図を記録するにはさまざまな方法があります。一体、どのような方法があるのでしょうか。それぞれの特徴や短所について、専門医が解説します。
目次
「不整脈が起きているときに心電図をとる」が鉄則
不整脈とは、簡単にいえば、脈が乱れている状態のこと。
通常、脈は一分間に60回から100回ほどの一定のペースで打っています。しかし不整脈の場合は、これが極端に少なくなったり、多くなったり、また脈の打ち方が一定でないなどの症状が現れます。
不整脈を確実に診断するには「心電図」
不整脈のなかには、息切れやめまい、胸痛、立ちくらみなどの自覚症状が現れることもありますが、なかにはまったくそうした症状がない場合があります。特に、不整脈が慢性化している場合には、自分が不整脈であること自体に気づいていないケースも少なくありません。
不整脈を診断する方法にはさまざまなものがありますが、最も有効なのは、「心電図をとること」です。心電図とは、心臓の電気的な興奮を記録したものです。心電図を見ることによって、不整脈の種類や心臓の筋肉の異常などがわかります。
不整脈の診断は「脈が乱れているとき」に心電図をとる
まず覚えておいていただきたいのが、確実に不整脈と診断するためには「脈が乱れている状態のときに心電図を記録しなければならない。」ということです。
不整脈の人の中には、常に不整脈が続いている人もいますが、ある日、突然、予期せずに、不整脈が発症する人もいます。 脈が乱れている瞬間を捉え、そのときに心電図をとらなければ、本当にその人が不整脈かどうか、確実に診断することはできません。不整脈を捕らえるために、さまざまな心電図検査があります。
心電図は病院だけでなく、自分でもとれる
心電図は、病院で心電図をとる方法から、自宅で簡易的な機器を使ってとる方法までさまざまあります。
もちろん正確性の観点からいえば、病院で行う検査がもっとも優れているのは間違いありませんが、どの検査にもメリットとデメリットがあります。それぞれの検査方法について、詳しく解説していきましょう。
多くの情報がつまった、病院で行われる主な心電図検査
病院で行う心電図検査は、主に以下の4つの方法があります。不整脈だけでなく、心筋梗塞、狭心症、心肥大などの検査にも用いられます。
1、もっとも一般的な心電図検査「12誘導心電図」
12誘導心電図は健康診断や人間ドックで検査した人も多いでしょう。
12誘導心電図とは、その名の通り心臓に流れる電流を12方向から記録したもののことをいいます。もっとも一般的に行われる心電図検査で、両手首と両足首に4個のクリップ電極を、胸部に6個の吸盤電極をつけて、心臓の筋肉が興奮する時に生じる電気的活動を詳細に記録します。
この検査では、心臓の電気的な活動をさまざまな方向から記録します。もし、不整脈が発生した瞬間に心電図が記録できれば、その不整脈の種類はもちろんのこと、心臓のどの辺りに起源があるかを推定することもできます。また、不整脈の他にも、心筋梗塞や心筋症、狭心症などを診断することもできます。
しかし、弱点としては、記録する時間が30秒から1分間、長くても3分くらいですから、その時間内に不整脈が起こらなければ、確定診断をつけることが難しいということが挙げられます。
2、24時間にわたって記録する「ホルター心電図」
12誘導心電図の弱点を補うべく使われるのが、ホルター心電図です。これは、携帯用の小型心電計を使って24時間、心電図を記録するもの。検査中の心電図はすべて記録されるため、一発の不整脈も見逃すことはなく、極めて詳細に不整脈の診断が可能です。
しかし、この心電図検査は誘導数が2方向と少ないため、12誘導心電図ならば可能な不整脈の発生起源などの判断はできません。また、24時間記録しても不整脈が現れない場合も多く、実際に「1か月に1回や、1年に数回程度しか不整脈が現れない」という患者さんも少なくありません。そういう場合は、ホルター心電図でも不整脈を捕らえることが難しくなります。
3、心臓電気生理学的検査(EPS)
もっと詳細に不整脈の状況を調べるときには、心臓電気生理学的検査(EPS)が用いられます。
これは、数ミリ径の細い管(カテーテル)を、足の付け根や頸の静脈から、心臓に向かって数本挿入する検査方法。カテーテルの先端には小さな電極が付いていて、電気信号を心臓に与えることにより、不整脈を誘発して診断する方法です。心拍数が速くなる、頻脈性の不整脈の診断に特に有効です。
12誘導心電図やホルター心電図では、体表に電極をつけるため、心臓の内部で起きている電気の伝達経路の異常や不整脈のメカニズムまで、把握することはできません。しかしこの心臓電気生理学検査なら、不整脈中の心臓内部の電気的興奮経路を詳細に理解することができ、診断ができたら、そのまま治療も可能です。
欠点は入院をしなければならないということと、頻度は極めて少ないものの合併症などのリスクが伴うことが挙げられます。
4、最長3年間、心臓を24時間モニタリングする「植込み型心電計」
もっと詳細に不整脈の様子を記録したいという人に推奨するのが、「植込み型心電計」です。これは、極小の心電計を前胸部の皮膚の下に埋め込むもので、最長3年間、心臓を24時間モニタリングすることができます。
心電計の植込みは局所麻酔を使用し、約5分で終了します。身体的な負担も少なく、日帰り入院での処置が可能なのも、この植込み型心電計のメリットです。
特にこの植込み型心電計を推奨するのは、失神を起こしたことのある患者さんです。原因不明の失神を繰り返す場合には、失神が心臓の病気に由来するのか、あるいは、心臓以外に原因があるのかを判断する上で、非常に有用です。
また、遠隔モニタリングが可能で、心電図記録は自動で病院に送信され、迅速で的確な診断が可能になり、速やかに治療へ進むことができるのも、植込み型心電計のメリットです。
欠点は特にありませんが、あえていうなら植込みや除去のために手術が必要なことでしょう。
本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。続きはコチラ>>
執筆者
東京ハートリズムクリニック 院長
桑原 大志
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