ペースメーカーの植え込みが必要な疾患
ペースメーカー治療とは、心拍数が遅くなる徐脈性不整脈に対して行われる手術です。
徐脈性不整脈には次の2つがあります。
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
洞不全症候群とは
洞不全症候群とは、右心房に存在する洞結節という組織が、なんらかの原因で電気刺激を発生しなくなり、心拍数が極端に減り、意識消失や労作時の息切れを生じるものです。
房室ブロックとは
房室ブロックは、心房と心室の間に存在する房室結節が機能せず、心房の電気が心室に伝わらなくなり、洞不全症候群と同様に心拍数が減ってしまい、意識消失や労作時の息切れをきたします。
ペースメーカーの役割
ペースメーカーとは、その失われた洞結節や房室結節の機能を補うものです。
ペースメーカーは鎖骨下方の皮膚の下に植え込まれ、そこからリードが2本鎖骨下静脈を経由して心房と心室にそれぞれつながっています。
心房と心室の興奮状態を常にペースメーカーがチェックし、洞結節が興奮しないときは、心房に電気を送り、房室ブロックが機能しないときは、心房の興奮に合わせて心室に電気を送ります。植込みに要する時間は約1時間です。
ペースメーカーが植え込まれた患者さんの胸部レントゲン写真です。
患者さんの左鎖骨の下にあるのがペースメーカー本体です。そこからリードが2本伸び、心房と心室につながっています。
技術革新により生まれた「リードレスペースメーカー」
近年、ペースメーカーは技術革新により高齢化社会に適応した進化が進んでいます。そんな中で注目すべきは、リードレスペースメーカーの登場です。
リードレスペースメーカーとはその名のごとく、ペースメーカーにつながっているリードがないペースメーカーです。
容積1㏄、重さ1.75gという小型のペースメーカーそのものを右心室に留置し、心室に電気が到達しないときに電気を送り、心室を興奮させます。
心室にしか機器を留置しませんが、心房興奮を観察し、それに同期して心室を興奮させることができます(メドトロニック社製)。
小型のペースメーカー本体が右心室に留置されています。(メドトロニック社製ホームページから転記)
小型のペースメーカー本体が右心室に留置されています
(メドトロニック社製ホームページから転記)
リードレスペースメーカーのメリットとデメリット
手術は小型のペースメーカー本体をカテーテルを使って、右心室に留置します。一般的なペースメーカーと違い、ペースメーカーとそれにつながるリードがないので、鎖骨の下の皮膚を切開する必要はありません。
メリットとしては、皮膚切開の必要がなく、リード留置に伴う合併症(リード感染、リード断線、気胸)が発症しないということです。
デメリットとしては、ペースメーカーの本体の電池(寿命10~14年)が切れると使用不可になることです。
リードレスペースメーカーの適応患者
このペースメーカーが適応になる患者さんは、徐脈性不整脈があり、なおかつ、超高齢の患者さんや、通常のペースメーカーが挿入困難と考えられる患者さん(感染リスクが高い、静脈が閉塞している患者さん等)です。
電池交換ができないので、長期的にペースメーカーが必要となる患者さんには不向きです。
当院では、メドトロニック社製とアボット社製のリードレスペースメーカーを使用しており。両者とも留置後、MRI検査は可能です。
当院のペースメーカー治療
当院では局所麻酔に加え、鎮静剤を使用し、うとうと寝ている間に手技が終わるようにしています。
また、優秀な心臓外科医が立ち合い、創部の縫合も実施してくれますので、傷口がとてもきれいです。
徐脈性不整脈でお悩みのかたはどうぞご相談にお越しください。